「競技用ヨーヨーに使うストリングを試作できませんか?」そんなお問い合わせをいただきました。

ストリングとは、ヨーヨーに取り付ける細いひものこと。今回のご相談は、市販されている競技用ストリングに近いものを国内で製作できないか、というものでした。

素材はポリエステルやナイロンを想定。撚り紐の製造だけでなく、

  • 希望する太さへの調整
  • 指定した長さへのカット
  • 片側のループ加工
  • 将来的な量産

まで含めたご相談です。

まずは現物を分解してみる

「ヨーヨーのひもなら、細い撚り紐でしょう」と思うかもしれません。しかし、競技用となると話は別です。お客様から太さの異なる2種類の現物サンプルを送っていただきました。森製紐でも、「一般的な撚り紐とは違う可能性がある」と考え、サンプルを分解して、使われている糸の太さや種類、構造などを確認することにしました。

実際に調べてみると、単純な撚り紐ではなく、ヨーヨー用として作られた専門的な構造のストリングであることが分かりました。

太さ違いは作れそう。でも、大きな問題が

構造を確認したところ、使用する糸の本数や撚り方などを調整することで、サンプルに近い太さのものを作れる可能性が見えてきました。ところが、ここで大きな問題が出てきます。材料のロットです。

白やカラーのポリエステル糸を用意しようとすると、必要となる材料は約50kg。ストリング1本を約2gとすると、およそ25,000~30,000本分の材料になります。試作したい数量は100~300本。将来的な量産を考えていても、初回は3,000~5,000本程度。「100本試したい」と、「材料は3万本分必要」の間には、かなり大きな差があります。

材料よりも、加工に手間がかかる

さらに、このストリングは材料を用意すれば自動的に完成するわけではありません。撚りを調整し、必要な長さにし、1本ずつ加工していく。ハンディタイプの撚り機を使用するものの、基本的には手作業です。

検討時の試算では、約1mの製品1本あたりのコストも、材料そのものより加工費の割合が大きくなる見込みでした。また、1,000本を加工するだけでも相応の時間が必要になります。つまり今回の商品では、「作れるかどうか」だけでなく、「量産できるかどうか」まで考えなければならないということです。

試作できることと、商品化できることは違う

商品開発では、「同じようなものを作れそうです」までたどり着いても、それだけでは商品になりません。材料の最小ロット。加工方法。人員。加工時間。コスト。販売予定数量。必要な納期。これらが合わなければ、技術的に作れても量産は難しくなります。

今回も、お客様と「まず少量で試作するにはどうするか」「量産時の材料をどう確保するか」「必要な分だけ段階的に加工できないか」といったところまで検討しました。

なんでもひも相談室では、「こんなひもを作れますか?」だけでなく、「これを商品として作っていけるだろうか?」という段階からのご相談もあります。競技用ヨーヨーの細い一本のストリング。調べてみると、その一本にも、想像以上に深いものづくりの世界がありました。